まず知っておいていただきたいこと

  • 貝毒は加熱してもなくなりません。 貝毒が発生している海域・河川で採れたしじみは、火を通しても食べないでください。
  • 貝毒の発生状況が確認できない場所で採ったしじみ、種類がよく分からない貝は、採らない・食べないというのが、公的機関が案内している基本的な考え方です。
  • 貝毒の最新の発生状況は、愛知県「貝毒情報」・愛知県「貝毒検査結果」で確認できます。
  • 貝毒とは別に、二枚貝はノロウイルスの原因にもなります。中心部を85〜90℃で90秒以上加熱することが、ノロウイルス対策として案内されています(貝毒対策にはなりません)。

以下で、それぞれ何が確認できていて、何が確認できていないかを詳しく説明します。


ヤマトシジミと麻痺性貝毒 ― 分かっていること

学術研究で確認されている蓄積

ヤマトシジミ(学名 Corbicula japonica)が麻痺性貝毒を蓄積することは、学術研究で確認されています。大阪湾沿岸のヤマトシジミとムラサキイガイを対象に、麻痺性貝毒の含有量・成分をマウスバイオアッセイ法とHILIC-MS/MS法で比較した研究では、ヤマトシジミの毒性はムラサキイガイより低いものの、C1・C2・ゴニオトキシン1-4(GTX1-4)という麻痺性貝毒の成分が検出されています(Nakatani et al., 2021)。

大阪・淀川下流域での検出事例

実際の検出事例としては、大阪・淀川下流域のヤマトシジミから、国の規制値(可食部1gあたり4マウスユニット)を超える麻痺性貝毒が、複数年にわたって検出されています。直近では2026年3月24日に採取された個体から28マウスユニット/g(規制値の7倍)が検出され、その後4月21日:5.9、4月27日:2.5、5月12日・5月19日:2.0未満と数値が下がり、3週連続で規制値を下回ったことから、2026年5月に安全性が確認されたという経緯が大阪市から公表されています。同様の検出は、国土交通省近畿地方整備局からも2018年3月・2022年・2023年・2025年と、複数年にわたって発表されています。淀川で獲れるシジミがヤマトシジミであることは、地元の大阪市漁業協同組合が学名付きで案内しています。

この事例は、あくまで「ヤマトシジミという種が麻痺性貝毒を蓄積し得ること」を示す参考情報として扱います。 大阪・淀川下流域で起きたことがそのまま三河湾・矢作古川で起きるという意味ではありません。地域によって海域・河川の環境やプランクトンの発生状況は異なるため、ある地域の検出事例を他の地域にそのまま当てはめることはできません。


愛知県・三河湾について ― 分かっていること・分かっていないこと

愛知県が公表している現行の監視情報

愛知県は、貝毒の原因となるプランクトンの調査と、貝の検査を継続的に行い、結果を公式サイトで公表しています。

  • 愛知県「貝毒情報」: 監視はアサリを中心に行われています。2026年7月16日の調査では、麻痺性・下痢性いずれの原因プランクトンも確認されず、次回調査は11月以降を予定と案内されています(2026年9月14日確認)。
  • 愛知県「貝毒検査結果」: 直近の検査(2026年5月19日実施分)では、貝毒は検出されなかったと公表されています(2026年9月14日確認)。

この2ページには、しじみ・ヤマトシジミについての記載はありません。 監視の中心はアサリであり、「アサリで検出されていない=しじみも安全」という推測はできません。 逆に、「しじみが記載されていない=しじみは監視されていない」とも断定できません。あくまで、公表資料の対象がアサリ中心であるという事実が確認できるだけです。

同様に、愛知県が2014年に公表した「二枚貝類の出荷自主規制の要請について(第3報)」という資料でも、対象はウチムラサキ・トリガイ・アサリの3種で、しじみの記載は見当たりません。ただし、これは2014年時点の個別の規制要請であり、現在の監視状況を示すものではありません。

この記事で断定しないこと

  • 愛知県の資料にしじみの記載が見当たらないことをもって、「愛知県・三河湾のヤマトシジミには貝毒の心配がない」とは書きません。
  • 2026年5月19日時点の検査で貝毒が検出されなかったことも、矢作古川のしじみが安全であることを証明するものとしては扱いません。 検査対象・検査時期が異なるためです。

つまり、愛知県・三河湾のヤマトシジミ、とりわけ矢作古川のしじみについて、

  • 貝毒が発生した事例があるかどうか
  • しじみが定期的に監視されているかどうか

の両方が、現時点でははっきりしない状態です。心配な場合は、上記の愛知県公式ページを確認いただくか、地域の保健所や愛知県の水産担当窓口に直接お問い合わせください。


貝毒は加熱してもなくなりません

麻痺性貝毒・下痢性貝毒は熱に強く、家庭での加熱調理では毒性が弱まりません(農林水産省「貝毒の特徴」)。大阪市も検出時の注意喚起で「加熱しても毒はなくなりません」と明記しています。つまり、「よく火を通したから大丈夫」という考え方は、貝毒に関しては当てはまりません。

ノロウイルス対策としての加熱は、貝毒対策とは別の話です

一方、二枚貝が原因となるノロウイルスの食中毒は、貝毒とは別の話であり、加熱によって対策できます。厚生労働省は、ノロウイルス対策として、二枚貝の中心部を85〜90℃で90秒以上加熱するよう案内しています(コーデックス委員会の国際基準に基づく)。冷凍や殻付きのまま調理すると、中心部まで十分に熱が入りにくいため注意が必要です。

貝毒とノロウイルスは、原因(化学物質かウイルスか)も対策(加熱が効くかどうか)もまったく別の話です。 「加熱したから安全」と考えるとき、それがノロウイルス対策としては正しくても、貝毒対策にはならない、という点を混同しないようにしてください。


死んだ貝・傷んだ貝をどう扱うか

今回の調査でも、死んだしじみや傷んだ個体をどう見分けるかについて、政府機関や自治体による明確な判定基準を確認することができませんでした。この点については、確立された公的基準が見つからなかった、という状態にとどめます。 独自の判定方法をここで示すことはしません。目安として使える公的な情報が確認でき次第、この記事に追記します。


自分で採ったしじみについて

潮干狩りなどで自分で採った貝は、市販されている貝と違い、出荷前検査(出荷規制)の対象にはなりません(東京都保健医療局「食品安全FAQ」、都の情報であり愛知県の見解そのものではありません)。同FAQには「貝毒の発生状況が確認できない海域の二枚貝や、種類がよくわからない貝は、食中毒予防のため、採らない、食べないようにしましょう」と案内されています。

矢作古川で自分で採ったしじみについても、採取場所の貝毒発生状況や貝の種類を確認できない場合には、こうした公的機関の注意喚起を参考に、食べるかどうかを慎重に判断したほうがよいでしょう。


現時点でおすすめできること

  • 貝毒に関する最新の発生状況は、愛知県「貝毒情報」・愛知県「貝毒検査結果」で確認する。
  • 採取地の貝毒の発生状況が分からない場合や、貝の種類がよく分からない場合は、採らない・食べないという選択も一つの考え方です。
  • 二枚貝を調理するときは、ノロウイルス対策として中心部までしっかり加熱する(ただし貝毒対策にはならないことを踏まえたうえで)。
  • 心配なときは保健所などの公的機関に相談する。
  • 愛知県・三河湾、とりわけ矢作古川のヤマトシジミに関する最新情報は、現時点で分かっていないことが多いため、不安な場合は個別に確認する。

砂抜き・保存の具体的な方法は「しじみの砂抜き方法」・「しじみの保存方法」、料理は「我が家で食べている、しじみ味噌汁」をご覧ください。


情報源・確認日

  • Nakatani, T., Masayama, A., Kiyota, K., Kakutani, N., Yamaguchi, Y., & Yamano, T. (2021). Comparison between mouse bioassay and HILIC-MS/MS for quantification of paralytic shellfish toxin in Japanese basket clams and mussels caught off coastal Osaka Bay in Japan. Food Additives & Contaminants: Part A, 38(11). DOI: 10.1080/19440049.2021.1941301 / 確認日: 2026年9月14日 / 対象地域: 大阪湾
  • 大阪市「淀川に生息するシジミから規制値を超える麻痺性貝毒が検出された件について(安全性が確認されました)」 https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000214703.html / 確認日: 2026年9月14日 / 対象地域: 大阪府(淀川下流域)
  • 国土交通省近畿地方整備局 報道発表(2018・2022・2023・2025年、淀川下流域のシジミの貝毒検出) https://www.kkr.mlit.go.jp/news/top/press/ 配下 / 確認日: 2026年9月14日 / 対象地域: 大阪府(淀川下流域)
  • 大阪市漁業協同組合(淀川産シジミ=ヤマトシジミの確認) https://www.osakashigyokyo.or.jp/marineproducts/ / 確認日: 2026年9月14日
  • 農林水産省「貝毒の特徴」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/g_kenko/busitu/01a_tokucyo.html / 確認日: 2026年9月14日 / 対象地域: 全国
  • 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html / 確認日: 2026年9月14日 / 対象地域: 全国
  • 東京都保健医療局 食品安全FAQ(自家採取と市販品の違いに関する参考情報。愛知県の見解ではありません) https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/anzen/food_faq/chudoku/chudoku26 / 確認日: 2026年9月14日 / 対象地域: 東京都
  • 愛知県「二枚貝類の出荷自主規制の要請について(第3報)」(2014年) https://www.pref.aichi.jp/soshiki/suisan/0000070500.html / 確認日: 2026年9月14日 / 対象地域: 愛知県(2014年当時の個別規制要請、現在の監視状況を示すものではない)
  • 愛知県「貝毒情報」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/suisan/0000000820.html / 確認日: 2026年9月14日 / 対象地域: 愛知県(監視はアサリ中心。しじみの記載なし)
  • 愛知県「貝毒検査結果」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/suisan/0000000830.html / 確認日: 2026年9月14日 / 対象地域: 愛知県(直近2026年5月19日実施分、検出なし)

この記事の内容は、上記確認日時点の情報です。貝毒の発生状況は変化するため、実際に採取・喫食される際は、必ず最新の情報をご確認ください。